2016年12月7日水曜日

日記 20161207 審査員



僭越ながらわたくしが審査員長というものを仰せつかって務めさせていただいた新潮社漫画大賞、現在発売中の月刊@バンチで発表されております。
受賞されたみなさま、おめでとうございます。

総評や個別の作品へのコメントは誌面に掲載されておりますので、ブログではちょっと角度を変えて感想を書いてみたいと思います。

自分がこういった新人賞への投稿者だったあの頃…早いもので15年ほど前になります。
以来、これまでたくさんの漫画家志望者と出会ってきました。先ず自分自身がそうだったし、同じ境遇の中で同志として出会った人もいれば、デビュー後に漫画家とアシスタントとして出会った人もいるし、ゲストとしてお邪魔した専門学校にて先生と生徒として出会った人もいます。その後、漫画家デビューして活躍してる人、違う幸せを掴んだ人、音沙汰なく「今なにしてるかなぁ」という人、十人十色いろいろです。

今回は審査員として向き合ったわけです。
初めての経験なので、ワクワクしていたし、ドキドキしていました。
でも、感想は「ウ〜ム」でした。
これは自分の担当編集者とも話したことですが、今回、漫画家志望者の作品をみて一番の感想は「昔と何にも変わってないじゃん」ということでした。例えば、今回読ませてもらった作品が『実は15年前の雑誌に投稿された作品なんですよ』と言われても気づかないだろう、と。圧倒的に、異質なものは、本当に珍しい。いや〜、なんでなのか。まったく漫画家志望者というのは、なぜかみんな同じような作品を描くなぁというのがこの15年間の実感です。

なんなんでしょうか。
なぜなんでしょうか。
なぜみんなと似たような漫画を描いてしまうのでしょうか。
言われるほうは、悔しいと思うし、むかつくと思います。
なぜなら、それを一番感じているのは、本人、自分自身なはずだからです。
感じてないとやばいです。
そして、感じているのは、たぶん新人漫画家だけではないです。
俺も一番感じています。
なぜ異質なほどの個性が持てないのだろうか。
自分が一番それについて悩みながら漫画家をしているので、
新人作家の作品を見る度に、その点が気になってしまうのです。
この15年、もがき苦しんでいることです。

先ず1本、作品を仕上げて投稿すること、それは非常に尊いことであります。
だいたい口だけで「漫画家になりたい」と言ってる人が圧倒的に多い中で、きちんと作品を仕上げ、たった一人で、見ず知らずの大人達から審判を下される場所に立つ。覚悟と勇気を讃えます。
今回、賞を得た人、得なかった人、結果を受けてのその後の人生の選択は様々だと思います。受賞を逃したことで漫画家をあきらめようと決断する人もいるかもしれない。
ですが、結局のところ、賞は、通過点であります。
その先のステージでも、ずーーーっと同じ闘いが続きます。
ずーーーーーっと15年、続いています。
「ああ、どうして他の人と同じ漫画になっちゃんだろう」と悩むわけです。
でも、小さな差でもいいから、なんとかして、差を作っていかないと、自分の席を得ることはできません。雑誌の席は限られている。漫画は実力主義の席取りゲームです。
小さな差を作っていくわけです。コツコツと。
小さな差をどれだけ積み重ねられるか。
小さな差を集めて、大きな差を作る。小細工だって集めれば大細工になるのです。

ある日突然、大きな差をもってる圧倒的な才能の新人が自分の目の前に現れて、
話題も人気もぜんぶかっさらっていくようなことがあったりもします。
そういうときはひれ伏すしかない。
でもそういう人も、実はこれまでコツコツと小さな差を集めていたのかもしれません。それこそ幼少期からの積み重ねも、非常に大きいのです。
でももう少し想像を働かせて、物事に時間軸を掛け合わせてみてみると、そういう人だって、小さな差を集めるのをやめたら、そこで力は止まるなぁという想像もできるわけです。
小さな差を集めていけば、出遅れた人でも、いつか追いつくこともあります。
愚直になることを恐れず、コツコツとやっていくと、いつかチャンスが来ます。
「チャンス」。その時に、小さな差でもいいから指先ひとつ先にひっかけることができたら、自分のほうが先に進めます。
競争というのはそういうものであります。

いやいや、プロになってからの競争のほうがより激しい?
闘う相手が、全員プロだから、それはしょうがない。
淘汰の激しい世界、生き残るためにみんなちょっとずつでも前進しようと必死です。プロがプロのスケールで努力するのだから、激しさはいかほどでしょう。もう、見てればわかりますよね。書店の本棚の入れ替えのめまぐるしさと言ったら。去年の本で、売り場に残っている本、一体どれほどでしょうか。
漫画家志望者のみなさん、そういう競争が待ってます。
ここまで描くと「もう無理だぁ」と嘆く漫画家志望者の人の声が聞こえてきそうですが、無理だと思うなら、本当にもうやめたほうがいいと思います。「いや、馬鹿にされても俺はやってやる」という人だけです。残って行けるのは。
はじめは周りからオカシイと言われたり、笑われたり。でも、そこを突破して何周かして「スゴいね」と言われる人ばっかりです。プロ漫画家は。
最後は、クレイジーな人生を楽しめるか、という言葉に集約されていきますかね。
今回の投稿者、受賞者のみなさん、クレイジーになれそうですか?

特になにかの結論を出すわけではありませんが今回の感想でした。
誌面のスペースは限られるので、ブログのほうに描いてみました。
みなさんの今後のご活躍を祈ってます。応援しております。